【3484】 ○ 針貝 有佳 『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか (2023/11 PHPビジネス新書) ★★★★

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日本と違いすぎるが、自身のマインドセットや日常の行動を変えるヒントもかなりある。

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デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか (PHPビジネス新書) 』['23年]

 本書は、2009年末にデンマーク移住後、13年以上にわたってテレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ウェブ等からデンマークの現地情報を発信するデンマーク文化研究家の著者が、なぜデンマーク人は労働時間が日本よりも短いのに、時間当たりの生産性は日本よりはるかに高いのかを、多くのデンマーク人へのインタビューなどを通して探った本です。

 第1章では、デンマークが2022年に国際競争力ランキングで世界ナンバーワンに選ばれ、世界から注目を浴び、中でも「ビジネス効率性」において4年連続首位であったその背景には、時代の変化への対応力があったとし、デンマーク人には、時代をリードする「先見の明」あるとしています。一方で、デンマークは「ワークライフバランス先進国」でもあり、デンマーク人は「家族と一緒に夕食を食べる」ことから始めるとしています。

 第2章は、「時間」をテーマにしています。デンマーク人に人生で大切なののは何かを問うと、「楽しむこと」「新しい人に出会うこと」「自分自身が健康でいること」といった答えが返ってくるそうです。デンマーク人は、優先順位の低いものはバッサリ切って、時間を意識的に使い、「仕事は午後4時に終了し、その後はフリータイム」が大前提なのだとしています。

 金曜日は早めの帰宅がOKで、上司は部下が先に帰っても気にしない、会議をする際はアジェンダと終了時刻を設定して延長はしない、時間的に「ムリしない、ムリさせない」を意識するとしています。仕事ばかりしていると、パートナーから別れを切り出されてしまうので、プライべートライフを守る「覚悟」を決めているとのことです。

 また、職場がユルい(カジュアルである)ことがクリエイティブなアイデアが生むことにつながり、それが生産性の向上につながると。さらに、休むからこそ、情熱がキープできているとし、長期休暇の取得は当たり前で、夏休み中はメールを「自動応答」にしているとのことです。

 第3章は、「人間関係」をテーマにしています。仕事において、マイクロマネジメントはNGとされ、部下を信じて任せるマクロマネジメントにより、上司も部下も楽になって「タイパ」が実現できているとしています。また、上下関係のないフラットな職場で、部下がやりやすい方法で仕事をさせるようにしているとしています。

 部下の意見を聞いて、組織改善に活かす風土があり、部下が働きやすい環境づくりを最優先し、部下との間に「ムリしない、ムリさせない」コミュニケーションを保つことで、「最強のチーム」が自然と生まれるとしています。

 第4章では、デンマーク人の「仕事観・キャリア観」について見ています。プライベートライフを第一優先とするデンマーク人にとって、仕事とは何かをインタビューから探ると、仕事は「自己成長」のためのものであり、あるいは自身の「アイデンティティ」であり、さらには「意味」を求めるものであるとのことです。仕事に求める「意味」には、「社会的意義」と「自分にとっての意味」があるとしています。

 そのため、デンマーク人は「転職」をポジティブに捉えており、デンマークは、社会のリソースを最大限に活かすための「適材適所のマッチング」が比較的上手くいっている国であるとして、本書を締め括っています。

「世界一ゆるい、だけどすごい働き方」とキャッチにありますが、何から何まで日本人や日本の職場と異なるため、「組織風土の違い」で片づけてしまう読者もいるかもしれません。しかしながら、上司学として読める部分や、自身のマインドセットや日常の行動を変えるヒントになる部分もかなりあり、そのつもりで読まれると得るものもあって良いと思います。

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